その男、クスノキにつき

先月半ば頃まで約一か月の間、新木場でアートフェスが行われました。
その短い間、榎戸材木店の水辺にはある男が立っていました。

背骨の具合がどことなく寂し気で、猫背にも顔にも文字通り風雨に吹きさらされた様子がはっきりと出ています。
そんな彼は愚痴をこぼすことなくただ一点を見つめて、しずかに立っているだけ。

「雨ニモマケズか……」と思いながら隣に立つと、かすかにクスノキの香りがします。
「ピノキオは確か松の木だったけど、君はクスノキか。日本書紀にも出てくるくらいだし、なるほどそうか……クスノッキオか」

水辺で一人、全くグルメの出てこない孤独のグルメごっこをしていたことが懐かしい木育部長の廣瀬です。