材木屋らしくない材木屋 (2)

良質な製品さえ作れば売れる。これは幻想にすぎません。と言うよりも、何が良質であるのか、そしてそれを誰に訴えるのかが最も重要です。
高品質、高精度な部品を生産しているメーカーは、その部品を使った最終製品である自動車やスマホを使用する消費者に対してPRしているわけではありません。その部品を使うことで明らかに性能が向上する、使い勝手が良くなる、軽量化できる、省エネで電池が長持ちする。そのような長所をアピールすれば、最終製品を生産しているメーカーは採用してくれるでしょう。消費者にアピールするのは下請けメーカーではなく、最終製品を売る企業です。
しかし、木材はそのような他との違いをアピールすることが難しい商品です。建材であれば断熱性能であるとか施工性の良さであるとか、価格の安さ以外にアピールできる点は色々とあります。ですが、無垢の木材の内装材は、そもそも「無垢材であること」がPRポイントなわけで、無垢材であるのなら安い方が良いと言われ、価格競争から抜け出せません。これでは低温乾燥材の良さを伝えることが出来ない…
中には一度使って頂いて、やっぱり違うねと、予算の許す限り低温乾燥の内装材を使って下さる設計事務所や工務店も出始めてはいます。しかし所詮、予算あってのことですから、そのために50万円、100万円を余計に出させるように施主を説得するのは困難です。
むしろ施主の方から、システムキッチンは、いずれリフォームで交換するのだからワンランク安いものにして、床のフローリング、壁・天井の羽目板には高くても低温乾燥の本当の本物を使って欲しいと言ってもらえるようにしなくては需要は伸びないと思います。
今の材木屋は設計事務所や工務店の言われるままに材料を収める下請けになってしまっています。昔の下請けメーカー、そのものです。それが現在の材木屋の姿なのだとしたら、当社は材木屋らしくない材木屋を目指さなくてはいけないと考えました。
しかし、考えるのは簡単でも、どうやって従来の材木屋のカテゴリーから抜け出したら良いのか…私も3年間、暗中模索を続けましたが、結論は得られませんでした。そこで、新しいビジネスは新しい世代に任せるべきと、第一線を退き、長男に社長を譲りました。
まず、今年に入ってから準備を進めていた、若い新入社員の採用に動き出し、社長に就任した2月早々、男女2名の20代の社員を雇用しました。次に、材木屋らしくない材木屋の事務所は、材木屋らしくない建物にすべきと、今、一流の商業デザイナーを交えて、徹底的な改装を進めています。10月末には完成予定なので、新木場方面にお越しの方は、ぜひ、お立ち寄り下さい。
                        さらに続く