材木屋らしくない材木屋 (1)

以前から、徐々に衰退していく新木場、そして木材業界を眺め、嘆きながら、いろいろと考えて来ました。衰退の理由、どうすれば活路が開けるのか、当社としては何をすべきか…
その思いは長男が後継ぎとして会社に入ってきてから、余計に強くなりました。不動産賃貸収入があれば、会社としては維持できます。さらに言うならば、儲からない木材の商売を廃業し、その土地を賃貸した方が収益は増えるのも事実です。
しかし、榎戸材木店の看板を出している以上、榎戸不動産にはなりたくなかったし、ましてや長男が跡を継ぐと言ってくれた以上、木に携わった商売をして行きたいと思いました。元々、外材色物問屋だった当社ですが、時代はもはやベイヒ、ベイヒバだのスブルースなど、色物、役物で生きていける時代ではありません。天然林で資源が減少する一方、そのような高級材を使う建物が激減し、需要が減っているのですから、業として成り立つわけがないのです。
供給に不安が無く、需要が増える可能性のある木材は何かと考えた末に行きついたのが国産材、特にスギでした。山に切り捨てられているほど潤沢な資源量があり、国や地方自治体もその有効利用に力を入れ始めていた時期です。NPO国産材を設立し、国産材を使うことの意義、意味を訴えながらのビジネス展開でしたが、既に既存の中小工務店は昔から取引のある材木屋がおり、当社が割って入れる余地はありません。それらを押しのけて売り込もうとすれば、価格で競争するしかありませんでした。それだけは避けたいと思いました。
そんな時に出会ったのが低温乾燥機、「愛工房」でした。当社がそれまで扱っていた無垢の内装材は中温・高温乾燥のため表面に艶がなく、パサパサした感じで、ウレタン塗装などで艶があるように見せかけていました。香り成分も多くが失われた上に、ウレタンの被膜で覆われているのですから、室内に無垢の木を張ったわりには木の香りがしません。
開発当時から愛工房を導入したいとアプローチして来たのですが、元々が外材問屋の榎戸材木店には入れさせないと拒絶され、ようやく国産材需要拡大への取り組みが認められて、奇しくも東日本大震災が起きた平成23年の3月に設置を終え、稼働を開始しました。
愛工房で乾燥させた無垢の内装材は、まさに天然乾燥そのもので、艶も香りも良く、また寸法安定性も増すので、あとからの狂いも少ない、理想的な商品です。しかし、それを上手く設計事務所、工務店、リフォーム業者に伝えることが出来ず、価格の高さから敬遠されて、思ったように売上、利益につながりませんでした。
                           続く