材木屋らしくない材木屋 (3)

新しい商業形態、材木屋らしくない材木屋を目指すには、事務所を改装するだけではなく、そこで取り扱う商品も替えていかなくてはなりません。もちろん、既存の低温乾燥させた天然無垢材の内装材がメイン商品であることには変わりありませんが、自動車が欲しいとディーラーを訪れる人にいきなり高級車を売りつけるのは無理があります。
極端に言えば、車のディーラーは自動車用の小物販売、修理から初めて、とにかく人に来社してもらい、それがゆくゆく自動車そのものの販売に結び付く。そして、家族構成の変化や収入の増加によって、より大きな、高級な車に買い替えて頂くと言う長期戦略が必要でしょう。
とにかく、新木場に榎戸材木店という材木屋が、面白そうなことをやっているということを知ってもらうのが、第一です。私も昔、それを考えましたが、JRの新木場駅から徒歩30分近くもあるので、消費者を引き寄せるのは無理だと、初めから諦めていました。
しかし長男は、むしろ駅から遠いのは短所ではなく、長所であると言う…駅前の店では、チョッと面白そうな店があるから入って見ようかと言う興味本位の人たちは集まるだろうが、その人たちは真のターゲットにはなり辛い。不便でも木に関心があって、行ってみようかと言う人の方が、本当の客になる確立が高いと言う。
確かに、グルメ番組やインターネット、ミシュランの3つ星レストランは皆、銀座や赤坂、六本木の大通りに面しているわけではありません。評判を聞きつけ、地図やスマホの案内を見ながら探し回り、やっと辿り着くことも、喜びの一つ、演出なのです。そのまで、私の考えは至らなかった…
しかし、来て頂いたからには失望させてはいけない。11月の8日には当社の敷地内でジャズやロックのミニ・コンサートを企画しているようです。これは木材とは縁もゆかりもない人たちが対象で、ただ新木場の榎戸材木店に行ってみると言うだけの話です。農業で言えば、種まき以前の、土を耕す段階です。とにかく、新木場という場所を知ってもらう、そこに榎戸材木店という会社があるということを知って頂くことがスタートです。
 それからが種まきで、榎戸材木店がどのようなことをしている会社か、何を作り、扱っているのか、その中に自分が興味あるものがあるか、こんなものは木で作れないかなど、肥料をやり、水を撒いて育てていく作業が始まります。収穫までには時間が掛かりそうですが、こうして得られた顧客は口コミでどんどん広がり、リピーターにもなってくれるものと思います。