「木の文化」とは? (1)

「欧州が石の文化なのに対し、日本は木の文化である」と、木材業界の人たちは自画自賛することがあります。それに対し、戦後、木材は燃えるからと、学校や公共施設などが木造の大型建築が建てられることが殆どなくなり、そうこうしているうちにヨーロッパやアメリカでは次々と大型木造建築が建てられてきました。中世の石造りの建物から、コンクリート造りを経て、今、欧州、北米では木材、木造が脚光を浴びています。
より安価に大型木造建築を建設するため、大断面集成材やLVL、CLTなどが開発され、10階建てを超える木造建築物も登場しています。日本も公共建築物等の木造を推進する法律が定められ、ようやく後を追い始めましたが、一歩も二歩も出遅れた感は否めません。その現実を見て、今や欧州の方が木の文化と呼ぶにふさわしいのではとの声も出ています。
東大寺の太い柱はニカワで接着された木材ですが、基本的には日本では大断面の木材でも無垢材を基本としてきたため、大型の建物は多額の費用が掛かるのが当然でした。オリンピックの国立競技場は2500億円どころか、どんなに金を積んでも無垢の木造は無理です。しかし、ヨーロッパで開発された大断面集成材やCLTを使って上手く設計すれば、8万人収容の木造競技場は不可能ではないと思います。しかし、それをもって日本は木の文化の地位を奪われたと言えるのでしょうか?
                           (続く)