杉の6つの吸収作用 Science of
Japanese Cedar

杉はその構造と成分により私たちの生活を支えてくれます。杉のたくさんの効果効能の中から、ここではその一部をご紹介します。

01

衝撃を吸収
- impact

木材は拡大するとダンボールのような構造をしており、中でも杉は特に空気層が多く(空隙率)その7 割を占めます。ガラス球を落としたときにどのくらいの高さで割れるかを比較した実験では、石やプラスチックよりも衝撃を緩和する結果となっています。杉は適度な柔らかさで体にかかる負担を軽減し、疲労を和らげてくれるのです。
(資料:宇野英隆「建築アラカルト」鹿島出版会、1986)

02

熱を吸収
- heat

杉はその高い空隙率により、保温・保冷効果にも優れています。空気の層が断熱効果を生み、熱伝導率が低い= 熱しにくく冷めにくいという特徴を持ちます。杉の熱伝導率は、コンクリートの12 分の1、塩化ビニルの14 分の1、広葉樹(桜やブナ)の16 分の1、鉄の483 分の1という低さです。一度適温になれば、夏はひんやりと涼しく、冬は足元から温かく、快適な室内環境を保ちます。
(資料:上村武「木づくりの常識非常識」,1992)

[ 時間経過による足の温度変化 ]
03

音を吸収
- sound

空気の層が多い杉は、幅広い周波数の音をバランスよく適度に吸収する効果もあります。より柔らかく、空気の層が多い素材で作られている吸音材ほどではありませんが、他の内装材と比較して最大10 倍以上もの吸音率があります。吸音率が高いことで残響時間も減少し、話し声や物音が柔らかく聴こえるのです。

[ 内装の周波数別吸音率 ]
04

光を吸収
- light

木材は紫外線をよく吸収するので、反射した光にはほとんど紫外線が含まれません。中でも杉の心材は光の反射率が低く、視覚疲労を特に和らげる効果があります。また、円錐模様と直線が入り混じった木目には交感神経を抑制する「1/f のゆらぎ」があるとされ、視覚を通してもリラックス効果を得ることができます。
(資料:「木を生かす」(財)日本木材備蓄機構, 1989)

[ 光の反射率 ]
05

湿度を吸収
- humidicy

木材の作用の中で特に知られているのが調湿作用です。湿度が高い時には空気中の水分を吸収し、低い時には放出することで、一年を通して室内を快適な湿度に近付けます。夏場は湿気によるジメジメした不快感を、冬場は空気乾燥による感染症を緩和してくれるのです。木材を多く使った施設は、そうでない施設に比べインフルエンザの罹患率が25%低いという結果も報告されています。
(資料:則元京 他 木材研究資料No.11,1977)

[ 住宅内の湿度変化 ]
06

においを吸収
- smell

杉の発する芳香「フィトンチッド」は、生活の中で発生する悪臭の元となる化学物質を分解する作用があります。具体的には、トイレ臭(アンモニア)、腐敗臭(トリメチルアミン・二酸化硫黄・酢酸)、下水のトラップ臭(硫化水素)、ペット臭(前記臭気成分の混合)、排気ガス( 窒素酸化物) などです。

[ フィトンチッドによるトリメチルアミンおよびアンモニアの分解反応 ]