日本の木材先端技術

日本で開発された木材から作られるセルロース・ナノファイバー製造技術が、今年、森林のノーベル賞と言われるマルクス・ヴァーレンベリ賞を受賞しました。
木材は主に「セルロース」、「ヘミセルロース」、「リグニン」の3つの物質から出来ています。その中で最も多いのが繊維を構成するセルロースです。糸のようなセルロースですが、衣服などを編む糸が更に微細な繊維を束ねて紡がれているように、木材の繊維であるセルロースも更に微細な繊維から出来ています。
これを細かく解きほぐしたものがセルロース・ナノファイバーですが、炭素繊維同様、軽くて強いとされ、重さは鉄の1/5、強度は鉄の5倍と、未来の素材として期待されて来ました。しかし製造コストが高く、大量生産が難しかったために実用化されませんでした。
しかし、東京大学の磯貝明教授と齋藤継之准教授、そしてフランス国立科学研究所植物高分子研究所の西山義春上級研究員の共同研究により、より安価に製造する道が開かれ、今回の受賞となったものです。既に数社の企業が実用化に向けて実験プラントを作り始めたとのことで、やがては炭素繊維に取って代わるのではないかとさえ言われ始めています。炭素繊維が化石資源から製造されるのに対し、このセルロース・ナノファイバーは永遠の循環資源である木材から製造されるので、極めて地球にやさしく環境負荷の少ない材料だと言えます。
前回、細かな木粉を食料に混ぜて食べる話を書きましたが、同様に枝や曲がり材などの未利用材を単に燃料とするのではなく、より付加価値の高い利用方法を模索することが、木材の有効利用と採算性の向上につながるものと思います。